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5G/MECを用いた浜松町駅ホームでの白杖検知 実証実験レポート

2023/03/09

1. はじめに

KDDI/KDDIアジャイル開発センター兼務の松本です。普段、5G/MEC(AWS Wavelength)に関する案件推進・技術支援などを担当しています。

5G/MECの低遅延伝送の特性を活かして、今回、浜松町駅ホームでのリアルタイム白杖検知の実証実験をセントラル警備保障株式会社様(以下、CSP様)主管の元実施し、KDDIからは5G/MEC環境の提供を行いました。実施内容、設備構成、現場の雰囲気など、通信事業者としての目線からレポートしたいと思います。

2. 背景

現在、駅構内の安全対策として、ホームドアの設置などが進んでいますが、転落事故などのリスクはまだなくならない状況です。今回、「5Gによる即時性の高い危険感知と対応による、駅の安全性の更なる向上」をテーマに、「白杖利用者の存在をいち早く検知し、必要なサポートを行えるようにできるか?」を確認する実証実験を行うこととしました。

東日本旅客鉄道株式会社様(以下、JR東日本様)が運営する、「モビリティ変革コンソーシアム」という、交通事業者と様々な企業や学術団体がつながりを創出し、モビリティ変革に取り組む枠組みがあります。また、同コンソーシアムの中に3つのワーキンググループがあり、その1つが「Future Lifestyle WG」(ICT・データを活用したヒト中心の街づくりを検討)になります。

今回、同ワーキンググループの中に、「白杖検知サブワーキンググループ」を開設し、その中で本プロジェクトを遂行しました。なお、プロジェクトのメンバーとしては、株式会社日本総合研究所様、株式会社ジェイアール東日本企画様、JR東日本コンサルタンツ株式会社様、JR東日本様、CSP様、KDDIとなります。

3. 実施内容

3.1 実施概要

浜松町駅ホームの自動販売機上にデバイスボックス(カメラや5Gルータなどを収容)を取り付け、ホーム上をカメラで監視します。

白杖検知写真01a

カメラ映像はリアルタイムに5Gネットワーク経由でMEC(AWS Wavelength)に送信され、MEC上の分析サーバで白杖利用者の存在をチェックします。今回はCSP様の作業者が、白杖を持ってホーム上の様々な方向に歩行し、それを検出できるかを確認しました。 白杖利用者を検出した場合、時刻及び映像(そのタイミングの写真)を運用者のタブレットに送信します。

白杖検知写真02a

3.2 結果

ホーム上の白杖利用者を一定レベル以上の正確性、即時性、安定性をもって検出することに成功し、駅の安全性向上の可能性を確認することができました。

  • 正確性:カメラの撮影範囲内に入った白杖利用者を、高い精度で検出することができました。一方、ホームドアの近くでは検出しづらくなる(ホームドアが白いので紛れてしまう)など、この場所ならではのチューニングが必要な要素もありました。
  • 即時性:検出から通知までを数秒程度(タイミングによりブレあり)の実用的なレベルで実現できました。
  • 安定性:今回の検証期間においては、5G通信の遅延・スループットとも安定しており、カメラ映像を安定してMECに伝送することができました。

4. アーキテクチャ

4.1 今回の構成

白杖検知写真03a

自動販売機の上に設置したカメラの映像を、カメラに接続したデバイスでエンコードし、5Gルータ/5Gネットワーク経由でMEC(AWS Wavelength)内に構築された分析サーバに送信します。

分析サーバにて、映像内の白杖利用者の有無をチェックし、白杖利用者を検出した場合は通知サーバを経由して、運用者のタブレットに検出時刻及び写真(検出時のスナップショット)を送信します。

4.2 5G/MECを用いた構成のメリット

従来の一般的な映像分析の構成では、撮影現場のカメラの横に、ある程度高性能なデバイスを個別に設置し、そこで分析処理を行います。そうした構成と比較して、今回は分析処理をMEC側にオフロードしているため、現場への高性能なデバイスの設置が不要、故障対応やバージョンアップなどのメンテナンスが容易、MECのGPUリソースなどを利用した高度な分析処理が可能、などのメリットがあります。 一方、映像をMECにそのまま送信するため、常時ネットワーク帯域を必要とするなどの課題もあるため、最適な構成を引き続き検討していく必要があります。

5. 現場から

実際に浜松町駅のホームで実証実験を行う前に、弊社のラボスペース(KDDI Digital Gate)にてリハーサルを実施しました。「白杖と白い傘は区別できるの?」などの検証を事前に実施しているところです。(写真の通り、無事区別できています)

白杖検知写真04

今回の実証実験の成果を分かりやすくご理解頂けるよう、「もし実用化されたとしたら、、」を想定できるような説明映像を作成しました。白杖利用者の方を本システムで発見し、通知を受けた警備員が駆け付けてサポートするまでを描いた映像になりました。現時点(2023/3)で一般には未公開ですが、もし公開された際にはURLなど追記したいと思います。

白杖検知-サムネイル

6. 終わりに

今回、実際に駅ホームでの検証を行い、精度の高い検知が可能なことを確認できたとともに、現場ならではの課題も発見でき、非常に有意義な知見が得られたと感じています。 今回の得られた結果を元に、今後、検知精度の向上や、白杖以外(車いすなど)への対象の拡張など、引き続き改善に取り組んでいければと思います。