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アジャイル開発センター憲章制定について

2019/07/10

2019年4月にアジャイル開発センター長に就任しました木暮です。 KDDIがアジャイル開発を開始した2013年7月から、エンタープライズアジャイルを成功させるために必要な様々な課題を、企画部門/開発部門両方の立場で解決してきました。

今月で7年目に入り、当初数名で開始したメンバーは、現在では開発パートナーを含め200名を超える大所帯となっています。開発拠点も2014年に開始したベトナムでのオフショア開発に加え、昨年度は沖縄でのニアショア開発も開始し、組織はさらに拡大傾向となっています。そこで、私たちが今までの経験の積み重ねから得られた大切にしたいことを明文化する必要性を感じました。

現場で働くメンバーが、同じ目標を持ち高いパフォーマンスを出すためには、シンプルかつインパクトがあるメッセージが必要です。KDDIにはKDDIフィロソフィがあり、全社員が価値観・行動規範のよりどころとしていますし、数多くの企業でクレド(Credo)を導入していることは周知の事実かと思います。

本日は、私の最初の仕事として新たに制定したアジャイル開発センター憲章をご紹介します。これまでにない競争市場環境の中、アジャイル開発の力で新たな事業創出や会社を変革していくという強い決意が込められています。

<職場の様子>

最初

2013年度

最近

2018年度

 制定プロセスについて

アジャイルソフトウェア開発宣言とKDDIフィロソフィを参考に、日々スクラムチームを運営するスクラムマスタ、組織運営を行うマネージメント層が共同で作成しました。アジャイルソフトウェア開発宣言は、以下の通り4個のシンプルなものですが、より具体的な行動に落とし込むため10個を目安としました。

アジャイルソフトウェア開発宣言

・プロセスやツールよりも個人と対話を ・包括的なドキュメントよりも動くソフトウェアを ・契約交渉よりも顧客との協調を ・計画に従うことよりも変化への対応

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<制定途中の1コマ>

アジャイル開発センター憲章

 

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議論を重ね、厳選した結果が上記の通りです。

大区分として「コア・バリュー」「行動指針」「カルチャー」に分け、「行動指針」は「-Business」「-Technology」「-Behavior」に細分化しています。また、各項目にはそれぞれ補足説明があります。

それでは、詳細内容を紹介していきます(※〇は検討メンバーの想い)。  

コア・バリュー

◆Agility 機敏であることが私たちの最大の価値であり、存在意義です。他の制約条件はかしこく満たし、Agilityを高めます。

〇Agilityはアジャイル開発の営みそのものを指しています。「他の制約条件はかしこく満たす」という点ですが、開発を進める上で様々な課題が発生します。それを全て解決することでサービス提供が遅れてしまっては本末転倒です。様々な課題をバランス良く判断して欲しいという思いを込めています。 

行動指針

-Business

◆お客さまの体験価値を最大化する 一つの指標だけにとらわれず、お客さまに届けられる価値が最大になるように考えます。

〇お客様に対する価値提供のアプローチは様々です。新たなサービス提供、UI/UX改善、品質改善など多くの打ち手があります。常にお客様の声に耳を傾け、Just-in-timeで価値提供を継続できることにこそ価値があります。 

◆アウトプットよりアウトカム ビジネス上のアウトカム(成果)を出すことにこだわります。そのためにアウトプット(出力)は小さく早く。無駄なものを作りません。

〇リリースをすることが目的では無く、お客様に価値を感じてもらうことが本当のゴールです。そのため常に妥協をせず、しがらみにとらわれず、価値を追求し続ける必要があります。

  ◆データに基づき改善する フィードバックを集める仕組みをつくり、データを基に考え、次の改善につなげるループを回し続けます。

〇データがあらゆる判断の根底となるよう、データを集め、分析し、活用する仕組みづくりを徹底する必要があります。ステークホルダーに対してもデータで語ればシンプルな判断が得られます。

  -Technology

◆課題は技術で解決する 一時的に管理の強化や手順の追加でしのぐことがあっても、必ず最後は技術で解決します。Agilityを守るために。

〇スピードを優先するがために発生した技術的な負債は、結果的に雪だるま式でベロシティ低下につながります。常に負債解消を心がけ、健全な状態を維持するように取り組む必要があります。

  ◆技術を磨いてチームに貢献する 技術力は競争力の源泉と考え、高めることを奨励します。そして磨いた技術力を実践してチームに貢献します。

〇チームは個人の集まりであり、個人成長の先にチーム成長があります。自己研鑽は当然ながら自分のためのものですが、チーム相互で情報をシェアすることにより、チーム技術力は飛躍的に上昇します。外部セミナーへの参加などで一時的でもチームに負担をかけてしまう場合は、フィードバックが必須です。

  ◆とことん自動化する 自動化によって手間を減らし、時間を生み出します。自動化された中身を理解し、改良の手を止めません。

〇アジャイル開発はタイムボックス開発(限られた時間とリソースで最大限の成果を出すこと)とも呼ばれており、まさに「時は金なり」という言葉がしっくりきます。自動化は時間を生み出すだけでなく、ヒューマンエラーによる品質低下も防ぐことができます。創意工夫により、どんどん範囲が広がります。自動化は正義です。

  -Behavior

◆スピードを優先し組織の壁を越える そこに落ちそうなボールに手が届くなら、誰がすべきかを主張する前に自分が拾います。役割や責任の話は後でします。

〇企業規模が大きくなるほど、組織間の軋轢が生まれ、仕事に隙間ができます。スピードを重要視するアジャイル開発において、役割や責任を議論している時間はムダでしかありません。その仕事をやれる能力があるのであれば、まずはボールを拾って進めるべきです。例えばPOの稼働が高くチケットが書けない場合、スクラムマスタがチケット作成をサポートしても問題ありません。チームで成果を出すことが最重要なのですから。

  ◆小さく早く失敗する 前向きなトライに失敗はつきもの。小さく早く失敗して、改善のヒントを得ることが大事。次に結びつかない凡ミスや、取り返しのつかない大失敗とは区別します。

〇失敗を恐れてアクションを起こせなければ、いつまでたっても先に進めません。失敗から学び、次につなげることを奨励します。そのためには、失敗を正確に判断するための基準と、振り返りの徹底、そして失敗を許容する心理的安全が担保された組織風土醸成が必要となります。

  ◆知見を共有し成果を発信する 私たちは独りよがりにならずに理解してもらう努力をします。それが楽しい職場を守ることにもつながります。情報は発信する人に集まります。受け身での成長には限りがあります。発信しながら成長していきます。

〇外部カンファレンスやコミュニティへ積極的に参画し、KDDIフィロソフィ「行動の原則」にある「外を見て内を知る」を実践しましょう。きっと自分達が知らない刺激がたくさん転がっています。また、自分が発信すればコミュニティの輪は自然と広がることでしょう。本に書かれた情報も大切ですが、旬な情報は外に出て直接得ることを心がけましょう。

カルチャー

◆たのしくやろう 楽しい雰囲気からしかワクワクするアイディアは生まれません。楽しくやりましょう。

〇KDDIは「通信とライフデザインの融合」を推進し、”ワクワクを提案し続ける会社”として、お客様やパートナーとともに持続的に成長・発展する未来に向けて、新しい体験価値を想像していきます。楽しさは個人からチームへ、そして会社へ伝播します。仕事にゲーミフィケーションを取り入れることも一つの解決策です。全員が楽しいといえるチーム作りを心掛けていきましょう。

    以上となりますが、いかがでしょうか。アジャイル開発に携わる皆様に少しでも参考となれば幸いです。KDDIアジャイル開発センターは、この憲章と共にさらなる発展を遂げ、お客様に価値を提供し続ける組織を目指します。     【補足】アジャイル開発センターロゴについて

Blogのサムネイル画像は、アジャイル開発センターのロゴマークで、これも今年に入り作成しました。アジャイル開発センター憲章同様、組織のシンボルとして大事にしていきたいと思います。

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adc = agile development center 筆記体のように文字がつながっているデザインは、アジャイル開発における「イテレーションサイクル」をイメージしています。