2022/11/01
こんにちは。KDDIアジャイル開発センターの田原です。
KDDIアジャイル開発センターでは、2014年からベトナムでのオフショア開発を現地パートナーと行っています。
コロナ禍が始まってから久しく現地に行くことができていなかったのですが、9月にようやく行くことができましたので、その様子をご紹介がてら、KDDIアジャイル開発センターにおけるオフショア開発の取り組みについてお話ししたいと思います。
KDDIアジャイル開発センターがKDDIの一開発部門として全社に先駆けて初めてアジャイルに取り組んだのが2013年ですが、その翌年にはもうオフショア開発を始めていました。当時アジャイルを進めるだけでもまだ障壁が多く、やっと最初のプロダクトが商用サービスを始めた頃でした。
当時から国内でもいろんなパートナー企業様にご支援いただいていたのですが、KDDIに限らず社会的にも多くの企業様でもアジャイルでのプロダクト開発を進める機運がどんどん高まる中で、国内のITエンジニアが不足していくことは経済産業省のレポートなどでも必然の近い未来として語られていました。
そのため、早いタイミングからアジャイル+オフショアに挑戦する決断をし、国内のパートナーと同様に「受発注の関係性を開発に持ち込まず、対等なパートナーとしてプロダクトの価値にフォーカスできる関係性を築くこと」を自らに課してスタートさせました。
まずFPT Software様とハノイにて1チーム立ち上げ、初めの1、2年は品質の安定やベロシティの安定にフォーカスしていましたが、次第にチームをプロアクティブにしていくことや、育ったメンバーの定着率をどう高めていくかの方に課題をシフトしていきながら、順調に拡大をつづけ、現在では6プロダクトチーム、40人程度にまで拡大しています。
また、一昨年からはアットウェア様とホーチミンシティでもオフショア開発に取り組んでいます。
ここまでの過程でも様々なエピソードがあるのですが、それはまた別の機会に譲るとして、今回はハノイ出張にて経験したこと・感じたことをご紹介します。
9月11日週の前半にハノイ、後半にホーチミンシティの日程でした。その間に直線距離でも1100km以上の移動日もありますのでそれぞれ現地メンバーと過ごせたのは2日間ほどでした。当社におけるアジャイル開発の推進を担当している私と、実際にそれぞれのプロダクトチームにてオフショアメンバーと日々一緒に開発を進めている社員2名とともに、計3名で訪れました。
目的としてはここでは詳細記載できないビジネス上の話も当然ありましたが、大きな目的は現地メンバーとの今後の円滑なコミュニケーションの礎となる人間味のある関係性を築くことです。そのためにチームメンバーの個々人をよく知り、同時に私たちをよく知ってもらう必要があります。実のところ、ベトナム訪問は2019年が最後となっていました。その後、2020年初春に訪れるはずが、ご存知の通りCOVID-19が流行し始めたためキャンセルとなってしまい、その後も厳しい水際対策を考えると現実的な出張日程を組むのが難しく、3年もの月日が流れてしまっていました。
「人間味のある関係性を築く、そのためにお互いをよく知る」という目的のために、2つのワークショップを行っています。
Moving Motivators
紙飛行機ワークショップ
具体的なワークを行うことで、オフショアメンバー各自の価値観について無理なく話せる場を醸成するために、Management 3.0のプラクティス(https://management30.com/practice/moving-motivators/)を使って、チーム単位にワークショップを行いました。
本来のものと異なるのですが、以下のルールで実施しています。
10種類のモチベーターの中から自分にとって最重要な3つを選ぶ
選んだ3つのモチベーターに対して、現状で満足している(K)か、不満(P)かを選択
チームの前で理由とともに発表
各Motivatorの定義説明は短い英語のもので、かつ短時間に読んで選んでもらっているので、人によって解釈は相当ブレます。また、私たちとの関係性の深さもバラつきがありますので、心理的に「P」は書きにくいというメンバーも居たとは思います。そのため、どのモチベーターが人気だったかとか、「K」が多かった「P」が少なかったとかを切り取って解釈するのはあまり意味があるとは思っておらず、あくまで手順3でのコメントでどんなことをしゃべってくれるのかを大事にして聞いていました。総じて、アジャイルでやっているということもあり、そこに適合してくれている今のメンバーはチーム内のコミュニケーションが円滑であったり、チーム内での認められていることに満足してくれていることが「Acceptance」「Honor」「Relatedness」などに表れ、その他は新しい技術要素に触れる機会のあるなしで「Curiosity」「Goal」「Mastery」などに「K」が付いたり「P」が付いたりという感じでした。
ただ、実は3年前にも同じワークショップを同じルールで実施していて、当然として人の出入りはあったのですが、当時から残ってくれているメンバーについては当時の結果と変わった点、変わらなかった点など比較出来て面白かったです。ある程度定期的にやれて、チーム在籍期間などとの相関なども見られると、別の気付きもうまれそうかなと思いました。
アジャイル界隈で有名な紙飛行機ワークショップもやってみました。こちらは結論から言うと、ファシリテートした私たちの方にこそ学びが多いものとなりました(笑)
国内でもチームビルディングや転入者研修などで何度か実施しており、その際の資料をベースに英訳して投影しながら説明したのですが、まぁ思うようにいかないことといったら!
一通りルールを説明し終わる頃には配った紙の4等分が終わっちゃってるチームが続出するし、何なら説明の途中から試作始めてディスカッションに没頭はじめるし、何ならもうテスト飛行しちゃってるしって感じで全くコントロールが効かない状況に陥りました。その後、何とか紙を配り直して、タイムスロットを確認しなおし、再起動してワークショップ自体はやり切りましたし、メンバーも楽しめて、スプリント毎の改善も体験できたので、終わりよければすべてよしではあるものの、国際コミュニケーションの難しさを改めて痛感したというのが一番の収穫?でした。
私自身は普段はもう直接プロダクトチーム内に入ってオフショアメンバーとモノづくりする機会から遠ざかっていたため、「あぁこうだったなぁ」と懐かしい感じにもなりましたが、やはり日本人向けの資料を英訳するだけではダメで、誤解を生まないようにどの順番でどれだけシンプルに伝えるかをプリプロセスする必要がある、と再認識しました。
帰国後、月一でやっている定例の全チーム間の情報共有会をやった際に、それまで以上に積極的にカメラに顔を出してくれて笑顔で挨拶してくれるようになり、一体感が高まったなぁと実感しています。
もともと高頻度で現地対応していたわけではなく、リモートで効率よくコミュニケーションしながらコラボレートするのが私たちのアジャイル・オフショアのスタイルでしたが、それでも最低年1,2回はこうやって顔を合わせ、お互い生身の人間であるという当たり前の事実を実感し、親近感の貯金を作っておくことの大切さを感じました。とアピールして、また行かせてもらう布石にしておきたいと思います(笑)
「フォーが美味しかったです」は聞き飽きているかと思いますので、オシャレでスタイリッシュな今どきハノイを紹介させてください。Lotte Center Hanoiの屋上にある「Top of Hanoi」です。地上65階のさらにその上からの最高な眺めと音楽と光でムード満点ですので、きっと普段飲まないようなカクテルを頼んじゃいますよ。