2023/05/10
KDDIアジャイル開発センター株式会社(KAG)開発1G の松好です。
先日幕張メッセで開催されていた「AWS Summit Tokyo 2023」に現地参加しましたので、気になったセッションやブース、感想についてレポートしたいと思います。
4年ぶりのオフライン開催ということもあり、AWSを本格的に触り始めてから初めての現地参加になりました。初日は朝から会場に向かいましたが、到着した時には既にかなりの混み具合で、まさしくお祭りといった感じでした。 特に、基調講演等が行われる会場は壮観の一言でした。
初日の基調講演では、弊社社長の高橋からも発表がありました。「KDDI Digital Twin for All」構想や、社内でのAWSを活用した取り組みについての紹介があったのに加え、KAG社についても言及があったので、現地で聞いていた身としては嬉しく思いました。
他に印象的だったのが、やはりと言いますか、アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社の長崎社長から昨今の生成系AI事情について言及があったことでした。AWS Bedrock等の生成系AIをAWS上で動かすためのサービスについてのご紹介がありました。また、「速く動いて、挑戦し続ける」と仰ったことは、弊社のアジャイル開発センター憲章にも通ずるところがあると感じました。
株式会社リコーから、GPT-3ベースのAIモデルの開発と、それを活用したサービス開発に関するプレゼンテーションがありました。
リコーでは「仕事のAI」という、VOC(顧客の声)を活用し、商品やサービスの品質向上を支援するサービスを提供されており、こちらのご紹介がありました。BERT世代のモデルがベースのようで、AI開発PFの提供により、利用するユーザー自身がモデルを開発出来る点は魅力的でした。
そんな中でGPT-3の出現はやはり衝撃的であったようで、GPT.X世代のモデルにより、BERT世代の、教師データの準備に時間がかかる、POC疲れ、といった問題を解消し、以下のようなことが実現出来るとのことです。
GPT-3による、より簡単な業種業務向けAIモデルと、モデルの開発環境の提供
より簡単なAI活用を実現するデジタルヒューマンの提供(これがすごく魅力的!)
リコーでは、GPT-3ベースのモデルを独自で開発されているそうです。(すごい!) Amazon SageMakerで分散学習環境を構築し、Amazon Machine Learning Solution Labの支援を受けながら実装を進められたとのことでした。
デジタルヒューマンのデモ動画では、デジタルヒューマンは音声認識×AIモデル×音声発話×CGで実現されているようで、CGのリアルさも相まってAIエージェントとの会話がかなり自然に出来ているように感じました。また、CGモデルにはUnreal Engineを用いているため、Pixel Streamingによりデバイスフリーに提供が出来るとのことです。つい先日リマスター版が発売された某ゲームの世界に憧れていた身としては、とても感動しました...!
最後に、デジタルバディが当たり前化する時代に向けてという事で、以下の展望を挙げられていました。
RLHF等の技術開発、プロンプトエンジニアリングの開発リソース拡大
GPT.X世代AIの開発・運用環境の提供
まさしくこのようなサービスを子供の頃から夢見ていて、大学でも自然言語処理系の研究を行なっていましたので、いよいよ手の届くところまで来たなと思いつつ、自分も遅れずにこの流れに付いていき、様々な価値を創出していきたいと思った次第でした。
また、AWS Expoの事例ブースにも出展されていましたので、そちらにもお伺いしました。事例ブースでは、上記のデジタルヒューマンの簡単な構成図とデモが展示されていました。実際にデモを体験してみましたところ、やはり会場だとノイズが多いため、音声認識が若干厳しいところがあるという事でしたが、それでも会話になっていたのではと思います。(実は音声認識エンジンも独自開発のようです...)
ブースにて、デモではかなり流暢な日本語を喋っていましたので、GPT-3ベースのモデルを開発する際にどのようなコーパスを利用したのかをお伺いしたところ、どうやら今年3月の言語処理学会(懐かしい...)という学会で論文 [1] が発表されたとご紹介いただきました。早速帰宅してから目を通してみたところ、当モデルは60億のパラメータを持つ大規模生成言語モデルで、WikipediaやCommon Crawl コーパスを言語分類及びクレンジングしたデータ、合わせてその数なんと1700億(!!)の日本語トークンで事前学習しているとのことでした... 凄まじい...
リコーのブース以外にも気になったブースが何点かありましたので、レポートしたいと思います。
株式会社アクセルスペースは小型衛星の開発、製造、運用を行なっていらっしゃる企業で、衛星の運用、全地球観測プラットフォーム「AxelGrobe」のAWS構成図を展示されていました。AxelGlobeは衛星画像を閲覧出来るサービスになります。
以前から気になっていたAWS ground station を実運用で利用されている例を初めて見る事が出来ましたが、驚くべきはその構成図の壮大さでした。基本的にはAWS LambdaやFargateを活用したサーバーレス構成であり、ground stationによる衛星管理、ground stationで取得した衛星データを加工処理し、AxelGlobeのフロントエンドでユーザーに提供する流れを全てAWS上で実現されていました。 現在サーバーレスでサービスを開発している身としては、かなり参考になりました。事例セッションでも発表されていたようですので、受講すればよかったと思いました...
店内BGMでおなじみの株式会社USENも事例ブースに出展されていました。有線放送のイメージがあったのですが、USEN Cameraを始めとした、店舗運営に関する様々なサポートを提供されているとのことでした。
ブースでは、USEN Cameraの来客分析機能のデータや天気予報等を活用し、AIを用いて来店客に合わせた曲をチューニングする「究極のおまかせ」店舗BGM が紹介されていました。こちらもLambdaを活用したサーバーレス構成、かつシンプルにまとまっているように見受けられ、大変参考になりました。 また、アクセス集中時に安定、かつ高速な処理を実現するためにDynamoDBを採用されていました。有線放送から店舗運営サポートまで手がけられている企業ならではのサービスで、非常に興味深かったです。
インフラエンジニアということで、Observability系企業のブースにもお伺いしました。現在システムの監視にDatadogを利用しているため、比較として、New Relic、Dynatrace のデモを見てきました。感想としては、両サービス共にダッシュボード等がかなり見やすく、アラート、エラーの原因が直感的に分かりやすいので魅力的でした。またそれぞれのサービスで良かった点は以下になります。
New Relic
IDEからコードと一緒に障害を確認したり、IDEにワンクリックで移動し、本番環境で動くコード上の、障害の原因となる箇所を確認することができる。
APMの機能が充実している
サポートが手厚い(AWSで言うところのSAのような部隊があるとのこと)
Dynatrace
OneAgentをホストにインストールするだけでホストの監視から、コードレベルの解析、RUMによるフロントエンド解析まで行うことが可能
AIを中枢機能としているため、リクエストの予測、コードレベルでの障害原因箇所の特定などが可能
様々なサービスを比較しながら説明を聞くことが出来るのは、このような大きなイベントならではだなと感じつつ、オフラインでの開催になったことに感謝です。
以上、AWS Summit Tokyoの参加レポートをお届けして参りました。オフライン開催でないと感じることが出来ない熱気を肌身で感じることができ、また実際に対面で様々な企業の方とお話をして知見が広まったので、大変良い経験になったと思っております。 反省点としては、初めての現地参加ということもあり、どのブースを見るか、どのセッションを見るか迷ってしまい、無駄な時間が出来てしまったことでした... 今回の反省点を活かし、次回の参加時にはもっと計画的に散策したいと思います!
おまけとして、個人的に面白かった、良かったノベルティをご紹介したいと思います
1. AWS Elastic Cushion
こちらは早期来場者は全員受け取ることが出来たクッションのノベルティです。着席して受講するセッションのお供としてお世話になりました
2. Dynatraceのブースでいただいたアイスキューブ
Dynatraceのブースをお伺いした際に頂いたノベルティです。早速使用するために冷やしております!
[1] 麻場直喜, 梅沢知紀, 川村晋太郎, 株式会社リコー. 日本語に特化した 60 億パラメータ規模の GPT モデルの構築と評価. 言語処理学会 第29回年次大会, 2023