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CES 2023 現地参加レポート

2023/02/08

はじめに

こんにちは、KDDIアジャイル開発センターの浅川 @yasakawa です。 今年1月にアメリカ ラスベガスで開催されたCES 2023に現地参加してきました。 現地の様子や感じたことについてレポートします。

CESとは?

CES(シーイーエス)は、全米民生技術協会(CTA)が主催する世界最大のデジタル関連の展示会です。2023年は1月5日〜8日に米国ネバダ州ラスベガスで開催されました。 以前は世界最大の"家電"の展示会と呼ばれていましたが、昨今ではモビリティやIT技術全般もその領域に含み、デジタル関連を広く扱う展示会となっています。

ここ数年はコロナ禍の影響により完全オンラインだったり規模を縮小しての実施となっていましたが、今年2023年は2020年以来で初となるコロナ対策の制限なしでの実施となりました。 出展企業数は3,200社と、2020年の4,500社の約7割ですが、これはゼロコロナ政策の破棄が開催直前だった中国からの参加企業が少なかったことの影響も大きいと思われます。

CES 2023 LVCC West

展示会場について

CESはラスベガスの複数の会場で実施され、その総展示面積は20万平方メートル(東京ドーム4個分)です。 展示会場はTech East・Tech West・Tech Southの3エリアに大別され、更にTech East会場のLVCC(ラスベガス・コンベンション・センター)は、West Hall・North Hall・Central Hall・South Hallの4つがあり、このホール1つとってもかなりの広さです。

エリア間の効率的な移動にはシャトルバス等の車移動が必須ですが、効率的に移動しても毎日2万歩は歩くことになります。実際に展示を見ながら歩いていると、気づいたらそんなに歩いていたのかという印象でした。

CES 2023 Transportation map

LVCC Loop

Tech East会場のLVCCの地下には、LVCC Loopという会場内の各所を結ぶ地下トンネルを走るテスラに無料で乗ることができます。 この地下トンネルはイーロン・マスク氏率いるThe Boring Companyが運営しており、氏の手掛ける事業の多彩さには驚くばかりです。なお、テスラは自動運転ではなく運転手が乗っていて、乗り降りの場所が決まっているタクシーのような印象です。1台幅のトンネルはカラフルにライトアップされていて、サイバー感覚を味わうことができます。実用面でも、歩くと15分以上はかかる距離を約2分で到着することができるので、とても便利です。

余談ですが、The Boring CompanyのWebサイトでは、WHY TUNNELS? の中でトンネルの必要性を次のように述べています。(日本語訳は筆者)

交通渋滞の問題を解決するためには、道路を3D化する必要があり、それには空飛ぶ車かトンネルが必要です。トンネルは空飛ぶ車と違って、天候に左右されず、視界に入らず、頭の上に落ちてくることもありません。

道路を3D化する手段として最初に言及されているのが「空飛ぶ車」であることに、ビジョナリーかつユーモラスさを感じました。

CES 2023 LVCC Loop

テーマはサステナビリティ

前置きが長くなりましたが、CES 2023の内容についてです。今回のCESではサステナビリティが大きなコンセプトとして発信されていました。主催者側のメッセージがここまで強烈に発信されるのは、CESの歴史の中でも珍しいことだそうです。

スローガンである「BE IN IT」(日本語訳では、その中に入れ/ジブンゴト化しろというニュアンスでしょうか)は、会場のいたるところで見かけることができました。このスローガンは、「メタバース、モビリティ、サステナビリティ、デジタルエコノミーなどに、自ら進んであなたの未来を預けよう」という、テクノロジーでよりよい未来を共に作っていこうという勧誘のメッセージとなっています。

CES 2023 BE IN IT

もう1つの大きなメッセージとして「HS4A(Human Security for All)」も会場の各所で目にしました。 これは世界芸術アカデミーが推進する、個々の人間の安寧を保障すべきであるという安全保障のコンセプトで、その中では食糧安全保障・ヘルスケア・個人の収入・環境保護・個人の安全・コミュニティの安全保障・政治的な自由などの要素が定義されています。 CESを主催するCTAは、人間の体験を向上させるために、あらゆる産業、あらゆる国の協力とイノベーションを促進することを目的としたこの取組みとのパートナーシップを強く表明しました。

CES 2023 HS4A

また、初日のKeynoteではJohn Deere社によるサステナブルな取組みと変革が語られていました。 世界的な人口増に対応するためには農業は現在よりも50%の増産が必要な中、経済的・効率的で、環境負荷を抑えたサステナブルな農業の実現には、テクノロジーの進化が必要であること。そのために同社は「農機具のメーカー」から「ロボティクスとAIカンパニー」へ変革し、「低い環境負荷」と「高い生産性」を実現したこと(Doing more with Less / Sustainable Grouth)が語られ、まさにサステナビリティ推しでの開幕となっていました。

CES 2023 Keynote John Deere

イノベーションの前提となる5G

CTAのSteve Koenig氏による技術トレンドに関する講演の中では、新たにMoT(Metaverse of Things)という概念が発表され話題になりました。この講演の中ではこれから起きるだろうイノベーションについて様々な示唆がありましたが、その中で5Gについて、これからのエンタープライズのイノベーション(インダストリアルIoT、自動運転、メタバース等)の前提となる技術と紹介されていました。

「The Modern Era of 5G」というセッションでは、5Gが与える影響ついて、コンシューマ領域とインダストリアル領域は大きく分けて捉えることの重要性に触れられていました。コンシューマ領域において5Gは高速なモバイル回線という見え方かもしれないが、インダストリアル領域においてはその大容量・多接続・低遅延が多くのイノベーションを開いていくという、前述のSteve Koenig氏の講演と同じメッセージです。

一方で、その普及状況にはまだ多くの課題があり、米国でさえ80%の家庭には真のブロードバンドが普及していないとのことでした。「5G and Beyond」というセッションでは5Gのコネクティビティ確保とデジタル・デバイドの解消という、日本にも共通する課題について議論が行われていました。

CES 2023 5G and beyond

スタートアップが集うEureka Park

Tech West会場にあるEureka Parkには、世界中の多くのスタートアップが集っていました。 もちろん日本からも出展されており、JETRO(日本貿易振興機構)がコーディネイトするJ-Startupエリアでは、約30のスタートアップが出展し、多くの来場者が訪れていました。

CES 2023 Eureka Park company list

CES 2023 Japan Pavilion

Eureka Park全体で特に印象に残ったのは、韓国の出展数と展示面積の広さです。今年のEureka Parkの展示の中で最大規模だったと思います。現地で情報交換した方の多くが印象に残った点として挙げていた程、大きな印象を与える展示規模でした。

CES 2023 Korea Startups

展示会場で気になった製品

ここからは展示で個人的に気になった製品をご紹介していきます。 非常に多くの製品の中のごく一握りになりますが、雰囲気を掴んでいただく一助になれば幸いです。

CES 2023 BMW iVision dee

BMW iVision Deeは、日本の各種メディアでも話題になっていましたが、外装にフルカラーE Ink(電子ペーパー)を採用し、ボディ全体の240セグメントを複数色で塗り分けられるというものです。 E Inkというと電子書籍デバイスというイメージだったので、こんな使い方もできるのだと驚きました。車以外にも同じ概念を活用できる可能性はいろいろありそうですね。また、いつかは個人所有の車へのラッピング広告がDOOH広告(デジタル屋外広告)の配信面になったりする未来もあるのではと想像しました。

CES 2023 Inuru elf

Inuru社のelfは、紙のような薄膜型の自己給電型のOLEDです。 プログラマブルな条件で発光制御を行うことができ、展示では小売店舗での物品へのラッピングによる販促や、医療品の操作方法のビジュアルガイドや期限切れの強調表示などのユースケースが展示されていました。実際に目にすると非常にわかりやすく目を引き、活用によりリアル社会のビジュアルインタラクションが変わる可能性を感じました。

CES 2023 Linkerverse

Linkerverse社は、手の爪の画像から健康状態を測定する製品を展示していました。 今回のCESではKeynoteで「家庭がヘルスハブになる」と表現されていたとおり、デジタルヘルスのソリューションが多数出展されていました。その中で同製品は「爪は健康状態を表す」という昔からよく言われる知識をデジタル化しており、なるほどこんなアイデアもあったのかと思いました。画像診断なのでスマホのカメラでもできそうに思いましたが、3箇所のカメラによる撮影角度がポイントとのことでした。なお、自分も試させてもらったところ、左手の小指の爪について腎臓病か亜鉛不足の可能性を指摘されました・・・。健康には気をつけようと思います。

さいごに

最後まで記事を読んでいただき、ありがとうございました。 現地での雰囲気や発表されたトピックについて少しでもお伝えできていれば幸いです。

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