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チームビルディング in ハノイ

2024/02/15

こんにちは。KDDIアジャイル開発センターのふかさわです。

私は現在、FPT Software様のベトナム・ハノイ拠点のエンジニアのみなさんとチームを組んで活動しており、2024年1月にハノイを訪問してチームビルディングを実施してきました。本記事はそのレポートとなります。

オフショア開発における対面コミュニケーションの重要性

コロナ禍以降リモートワークが浸透し、アジャイル開発の現場においてフルリモートでもスムーズにコミュニケーションが行われているかと思います。 しかしオフショア開発においては、異なる文化・言語のメンバーで一緒に働きますので、情報の欠落や認識齟齬が発生する確率が上がりやすいと感じています。異文化を理解しメンバーをよく知ることで、背景を紐解くことができ、コミュニケーショントラブルを回避すことに繋がります。また、チームで働くうえで信頼関係は重要ですが、相互理解が無ければそれも難しくなります。 異文化を理解し、メンバーをよく知り、信頼関係を築くために、対面コミュニケーションをとることは大きな助けになります。

アジア圏は比較的似た文化で一緒に働きやすいと言われていますが、勿論異なる点もあります。ここで参考までに、異文化理解の文脈でよく使われるErin Meyer提唱の「カルチャーマップ」をご紹介します。文化の壁を乗り越えて成功するために知るべきビジネス文化の相対比較です。

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[画像出展] https://www.mdttraining.vn/post/on-our-bookshelf-the-cultural-map-by-erin-meyer [参考] https://erinmeyer.com/about/

日本とベトナムを見てみると、直接の否定的フィードバックや意見の相違を好まない点や、信頼形成が関係性ベースである点は同じです。一方、意思決定は日本は合意型、ベトナムはトップダウン型です。時間について、日本はスケジュールを遵守し、ベトナムは状況に合わせて柔軟に対応します。また、両者はハイコンテキスト文化同士ですので、お互い察し合ってしまい誤解が起こりやすい点は注意する必要があります。

対面コミュニケーションをとることでリモートでは感じることができない部分もわかり、異文化理解が深まります。

ハノイ訪問の目的

私自身チームにジョインして3ヶ月経ち、まだメンバーと対面で会っていませんでした。かつ、「半数が新メンバーになる×担当業務の拡大」というタイミングのため、一度立ち止まってチームビルディングを行うことを目的としていました。対面コミュニケーションによる「相互理解」と「チームの在り方の目線合わせ」「チームのゴール設定とアクションプラン作成」の3つを重点的に行いたいと考えていました。

社内から別目的のあった部長と2名で、3日間の日程でハノイ市西部のホアラックにあるFPT Software様を訪問させていただきました。素晴らしいオフィスの様子はこちらの記事(【ベトナム ハノイ】オフショア拠点に行ってモブプロしてきた)で紹介していますので、ぜひご覧になってください!

チームの状況

2023年後半〜2024年前半にかけてメンバーが増え(私および4月ジョイン予定まで含め6名増)、チームの担当業務も拡大予定です。チームはかつてプロダクト開発を担っていましたが、昨年から保守を担当するようになりました。 私がジョインする前から既にチームのリズムは形成されていましたが、次のような課題を抱えていました。

  • 日々の業務は単調なタスクが集中することが多い。また、明示的なチームの中長期的なゴールがなく、モチベーション維持が難しい

  • 広い業務領域の中で暗黙知となっている部分が多く、新メンバーはキャッチアップするのが難しい

  • 毎日Scrumイベントの機会はある(1 Day Sprint)ものの、ゆっくり雑談したりチームビルディングをする機会を作れていない

これらの課題は、上述の訪問の目的を設定した背景でもあります。

チームビルディング

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事情によりハノイオフィスを訪問できないメンバーもいたため、オンオフのハイブリッドでの実施とし、4月ジョイン予定のメンバーにも参加していただきました。 まず、「チームビルティング」や「心理的安全性」などの解釈と、今回の目的の認識合わせから行いました。メンバーのバックグラウンドは様々です。想像していたとおり解釈のブレがあったので、最初に合わせておくことでワーク中の集中も高まったのではないかと感じています。 その後、チームミッションの認識合わせ、役割と責任の整理、自己紹介、期待のすり合わせ・・・など、チームの形成期やプロジェクトのキックオフ時にお馴染みとされるコンテンツを実施していきました。 更に、チームとしての長期ゴールの設定と現状把握(ふりかえり)からギャップを特定し、中期ゴールの設定と改善計画を立てる!というところまで当初計画していたのですが・・・すべてを終わらせることは出来ず一部は持ち帰り(後日リモートにて実施)となりました。

実施コンテンツ
  • チームビルティングとは

  • チームのミッション認識合わせ

  • 役割と責任の認識合わせ

  • グランドルール

  • 自己紹介

  • 部長からチームへの期待

  • ドラッカーエクササイズ

  • 自己組織化ゲーム

  • ロードマップ認識合わせ

  • デザインチームアライアンス

  • ゴール設定(中長期)

  • 現状把握(ふりかえり)と改善計画 *一部持ち帰り

  • ランチや夜の懇親会での交流

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この中から2つをご紹介します。

ドラッガーエクササイズ

アジャイルサムライの著者 Jonathan Rasmusson が提唱したもので、相互理解(価値観共有)や期待の擦り合わせの効果があります。オリジナル版は4つの質問に答えて共有するというものですが、チームとしてサポートが必要な部分もあぶり出したかったので1つ追加して5つの質問にしました。

  • 自分は何が得意なのか?

  • 自分は何が不得意なのか? *追加

  • とういう風に仕事をするか?

  • 大切に思う価値は何か?

  • チームは自分にどんな成果を期待していると思うか?

このほかによくあるパターンとして「それぞれのメンバーへの期待」を追加することもあるのですが、今回は、事情により追加しませんでした。(が、質問で一部補完できました。) 手強い質問(心理的安全性がないと雰囲気が悪くなってしまいそうなもの)や、面白い質問なども飛び交い、相互理解が進んだと思います。 最後に、興味深い質問に投票をして、みんながどんなところに興味・関心を持っているのかを可視化しました。個人的にもチームの中でのふるまいのヒントが得られました。

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[参考] https://agilewarrior.wordpress.com/2009/11/27/the-drucker-exercise/ https://dev.classmethod.jp/articles/teambuilding_druckerexercise_rolesession/

デザインチームアライアンス

システムコーチングのツールで、4つの質問に答えてチームのありたい姿を作ります。アジャイル開発ではプロダクトビジョン(インセプションデッキではエレベーターピッチが該当)を作成してその実現に向かっていきますが、その「チーム版」であると考えることができると思います。

  • 素晴らしいチームってどんな感じ?

  • 素晴らしいチームには何が必要?

  • チームが困難に出くわしたらどうする?

  • 素晴らしいチームやそのメンバーが果たす責任は?

ふりかえりなどで用いてチーム自体を検査適応するのもよさそうですし、問題にぶちあたった時に原点に戻ることができるツールでは?という期待もあります。 ここでも賛同したものに投票をしてもらうことで、みんなの思いを可視化し、目線合わせをすることができました。

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[参考] https://www.agile-moose.com/design-team-alliance https://note.com/takahiroyte/n/nc5fbd4d42fe2

ハノイ訪問を終えて

私たちのチームは、全員がリモートワークです。Scrumイベント中はカメラON推奨で、画面越しに顔を合わせて、なるべくみんなと直接会話するよう心がけてきました。チームにジョインしてから3ヶ月間少しずつリモートで縮めてきた距離が、一気に縮まった感覚です。 メンバーの相互理解が進んだこと、チームの現状とゴールの共通理解を対話しながら持てたこと、これらによって今後の活動のヒントがみつかったこと、などが収穫でした。また、訪問後にチームで「KAIZEN*」の取り組みを開始できたので、これを継続していきチーム力をみんなで高められればと思います。 * KAIZEN = 継続的改善を意味する言葉として海外のリーン、アジャイルの現場で使われています

できれば次回は、今回リモート参加となってしまったメンバも含め全員で同じ場所に集まれれるとよいな、と思いました!

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